「ローマ」という作品は、イタリア映画の巨匠フェデリコ・フェリーニ監督か1970年代に手がけたもので、わたしは20代のころにDVD鑑賞しました。当時はとんがった映画の印象をもちました。
年齢を重ねるとフェリーニのローマはとんがった映画ではなくて、フェリーニの人生を通して「ローマ」のエピソードが重層的で面白さがわかります。面白いと感じた「ローマ」のシーンを紹介します。
ネタバレになる部分が多いかもしれませんので、ネタバレ苦手は人は記事をスキップしていただきますようお願いします。
ローマは憧れの都市
イタリア人にとってローマは憧れの都市のようで、ローマに旅したことを周りに自慢話をするシーンが描かれています。
主人公はローマに憧れる青年時代に上京します。ローマ駅は大変な混雑ぶり。
幼いころから地方の学校で古代ローマの偉業をたたえる癖の強い教師たちにローマを教えられ、ローマという都市は今も昔も栄えるイタリアの特別な場所なんだと伝わります。
青年期のローマ、現代のローマ、ファッションが変われどローマは悠然と存在する描き方です。
オープンカフェで食べるパスタのシーン
路面電車が通り、喧噪のなか食堂のオープンカフェには騒がしく食事をするシーンがあります。
トマトベースのパスタをほおばり、世間話とやんちゃな子供をいなす母親の騒がしさ。
外のほこりが食べ物にかかっていそうなぐらいの喧噪でも食事に集中して楽しむ人たち。
香水が画面を通して匂ってきそうなマダム。
子供は口の周りいっぱいにトマトソースをつけてお行儀悪いけど、はしゃぎっぷりがかわいいです。
庶民のパスタ。こういうパスタを食べてみたいと思うシーンです。
古代の遺跡発見と儚さがあるシーン
ローマは遺跡が多いという象徴的なエピソードです。地下に手付かずのローマ時代の遺跡を発見。現代の空気と古代の空気が入り混じる中、タイルに描かれた風俗画が生き生きと色彩豊かに描かれています。
興奮さめやらぬ考古学者たちが眺めている間、次第に壁画が凍っていき色彩は薄れ消えていきます。
現代の空気にあてたから?化学反応?
色彩がなくなり壁画が壁になっていく様はフィクションであっても儚い古代の夢を見ているような気分です。
バイクのライトに照らされる遺跡
現代の日本でいう暴走族のようなバイク集団が夜な夜なローマ市内を暴走するシーン。
夜のローマは都市であっても光は抑えられているようで、バイクのライトが目立つくらいの暗さ。
縦横無尽のバイクのライトが古代遺跡を照らしていくだけなのですが、遺跡は今も昔も光に照らされているような存在なのかもしれないです。
書ききれないエピソードの数々
印象的なシーンのみ紹介しましたが、ほかにも沢山のエピソードで成り立っている映画です。
青年期のローマは大人の世界も描かれていたり、ムッソリーニ政権時のため戦争中のローマを描いています。
フェリーニ作品は日本でいう太秦のような映画撮影所(チネチッタ)での撮影が多いといので、どこまでが屋外なのか判別が難しく、その作り物を映像から見つけて楽しめます。
ローマで住むアパートが不思議な構造で、プライバシー無視したようなご近所付き合いのなか、騒がしい日常のローマの街がリアルに感じます。
例えば、都会の東京で過ごした自身の思い出というのを映像にするとしたら、フェリーニのローマのような数々のエピソードができあがりそうです。その時に出会った人々との一期一会。憧れの都市の思い出エピソードは誰でもあるものではないでしょうか。
ローマに行ったことはないですし、フェリーニのエピソードと同じ経験は少ないけれど共感できる懐かしさがあります。その共通する想いを思い出させてくれる映像を作るフェリーニはすごい監督です。
