1940年代映画「街角 桃色の店」を観た感想

映画・美術

アマゾンプライムで視聴した「街角 桃色の店」は独特な恋愛映画でした。監督や俳優をチェックすると有名な人ばかりです。1940年代の映画はモノクロ画像で色彩がないのに、カーネーションの色は想像できました。一般的に有名な作品ではないかもしれませんが、この映画の特徴についてご紹介します。

ルビッチ流の恋愛喜劇と人間模様

初見のテンポの良さで映画監督がエルンストルビッチと知り納得しました。

映画「ニノチカ」でルビッチ監督と出会い、軽妙なコメディータッチの作品で監督名は覚えていました。この作品もルビッチ流のテンポの良さと洒落た演出が散りばめられています。

作品の序盤から恋愛映画のお手本のようです。中流社会の顧客層を持ち社員数人で切り盛りしている小さな商店(百貨店)で、自然と男女が出会います。ともすると恋愛映画は二人の世界だけで物語が進行しがちですが、働いている店員の個性や社長の気性を随所に盛り込み、男性主人公の仕事への姿勢や店での立場がわかる描き方です。

女性主人公も仕事の営業力が上手い面と、恋に夢見ている素顔をのぞかせて、したたかで可愛い人です。

顔を知らない同士の交流

1940年代といえばスマホのような便利道具がなく通信手段が電話・手紙の世界です。文通であっても相手の顔を知らずに交流しているのは現代のマッチングと変わらないので、初めての相手と会うドキドキ感は共感ができます。

手紙に綴られる理想やロマンチックな想いと現実のギャップが面白さを醸します。

唯一視聴者が男女主人公の素性を知っています。映画の主人公たちはお互いを知らず、空回りしている描き方に視聴者は次の展開が待ち遠しくなるでしょう。

物語の後半、男性主人公は手紙相手の女性を特定できてから最高潮に面白くなります。

失業時代の時代背景とメンタルの強さ

舞台の商店は少人数の店員で支えていて、雇用にゆとりがありません。失業者が多い時代のようです。そんな背景で、昇給・昇進が頭にちらつきつつも実直に仕事をし、社長に意見ができる男性主人公が思わぬ誤解で解雇されます。

解雇されても毅然としている主人公を演じるジェームズ・スチュアートの佇まいは、ブレがなくメンタルの強さをあらわして素敵です。

そして、急に無職となった状態でも女性主人公と距離を詰めようとする姿勢は、応援したくなりました。

喧嘩するほど仲がいい

何も気づいていないの女性主人公が、自分の本当の気持ちを告白します。一気に距離は縮み、強引にハッピーエンドを迎えます。

物語は恋愛以外の要素も丁寧に描かれています。例えば、気性の激しい社長は悩む人だったという側面がわかり、物語に深みをもたせています。恋愛関係・人間関係とバランスがとれている物語だからか、映画は早く終わったように感じました。

男女双方の手紙と現実の姿のギャップと、仕事で反発しあっても裏返せば惹かれていたという揺れが上手に描かれていました。

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